ブルーグラス名曲の歌詞(1):My Little Georgia Rose -ビル・モンローの隠し子の歌
ブルーグラスの歌は、どうしても英語の語感やイントネーションと切り離せない関係にあります。日本語に移すと、別の曲のようになってしまいます。(これは、どのジャンルの歌でも同じでしょうが。)
そこで、意味も分からず、とにかく英語で歌っているのですが、その中身や意味はあんまり気にしないまま、訳も分からずきてしまった、という曲も、多いのが実態かと思います。
そこで、今日は、少し、ブルーグラスの有名な曲の歌詞を、じっくり眺めてみることにしました。
★ ★ ★
まずは、ビル・モンローの名曲、My Little Georgia Rose です。
この曲については、このブログでも以前取り上げたことがあるのですが、再度、その歌詞を実際に見て行きたいと思います。
MY LITTLE GEORGIA ROSE (GEORGIA ROSE)
(Bill Monroe)
Now come and listen to my story
A story that I know is true
My little rose that bloomed in Georgia
With hair of gold and a heart so true
この第一バースのところは、「これからおいらが知っている本当の話を聴いてくれ」ということなんですが、ビル・モンローにとっての My Little Georgia Rose の話は、本当のことだったという説があります。" A story that I know is true" なんです。
つまり、人気のあるスターにはつきものですが、ご他聞に漏れず、ビル・モンローにも隠し子が居たらしいです。(もちろん確証はありません。)
ビルの愛人かつベース奏者でもあったベッシー・リー・モウルデンは、一時期、Georgia へ移り、女の子を産み落として里子に出しているそうで、これが、ビルとの間に生まれた My Little Georgia Rose ではないか、というわけです。きっと、金髪のかわいい女の子だったんでしょう。
(Chorus)
Way down in the Blue Ridge Mountain
Way down where the tall pines grow
Lives my sweetheart of the mountain
She's my little Georgia rose
Blue Ridge Mountain は、ジョージア州の北部から、ウエスト・バージニア州まで繋がる広大な山地です。私は、ずっと以前に、ノースカロライナ州の友人の家へ行った時、近くを訪れたことがあるだけですが、その「田舎度合い」には感激したことを覚えています。
とにかくブルーグラスには、Blue Ridge Mountain はつき物ですが、この周辺の町の名前も含めて、ブルーグラスの常識として、もう少し知っていてもいいのかもしれません。もっと勉強してみよう。
Her mother left her with another
A carefree life she had planned
The baby now is a lady
The one her mother could not stand
(Chorus)
この2番の歌詞は、随分と酷です。
本当のところは分かりませんが、"Her mother left her with another, a carefree life she had planned" ということは、「ベッシーが娘を残して別の愛人と出て行ってしまって、気楽な暮らしをしようとした」ということになります。
この辺の事情は、やはり人の子として、週刊誌的な興味に惹かれるところです。ベッシーが離れたのには、ビルの側にも何か事情があったのかもしれませんよね。
"The baby now is a lady, The one her mother could not stand" という表現も、ビルのものだとしたら、随分ときつい言葉です。「当時の赤ん坊は、今や立派なレディー。母親も耐えられないくらい」というようなところでしょうか。
"could not stand" という表現の訳は難しいですが、そこに込められたビルの思いというのは、母親への手厳しい批判の感情の表れなのでしょうか。
とは言え、ベッシーとビルの関係は、この後もずっと途切れながらも続くので、どうなっているんかな、という感じですね。
We often sang old songs together
I watched her do her little part
She'd smile at me when I would tell her
That she was my own sweetheart
(Chorus)
ビルは、自分の隠し子と会って一緒に歌を歌ったりしたことがあったのでしょうか。
「私のスイートハートと呼んだ時に、彼女は私に微笑んだ」ということですが、彼女が本当の父親は誰かについて、その時知っていたとは限りませんよね。(と、まぁ、憶測ばかりしてもしかたないのですが。)
この My little Georgia rose が本当に居たのかどうかは、誰も名乗りを挙げていないので、判然としていません。まだ、Blue Ridge Mountain のどこかに潜んでいるのかもしれませんね。
ところで、このような歌詞を日本語に訳そうとするとひどく難しくなります。
例えば、日本の歌謡曲には、失恋、別離の類は無数にありますが、間に生まれた子供のことに触れた曲というのは、あんまりないのでしょう。こんな情緒的でない表現を含んだ赤裸な歌詞を日本語で歌ったら、我々の感覚からすれば「歌にならない」ということでしょうか。
やっぱり、ブルーグラスは、英語で歌うしかない!
by kasninoyh | 2005-07-13 22:08 | ブルーグラスの曲・歌詞